日本人には”オボン”コボンってゆー習慣があるそうで、先祖を敬うためにお墓参りをするんだって。今日はお墓参りツアーをした後、オイラ達の街から車で1時間の古川市にあるクマゴローの両親宅に泊まることになったんだ。
クマゴローの両親宅、”オオクマ家”に着いたのはもう夕方。大酒飲みのクマゴローとうちゃん”クマジイ”と動物嫌いのクマゴローかあちゃん”クマバア”は、オイラがついてったんでちょっとビックリしてた。クマゴローをはじめて見た時も怪獣じゃないかと思ったくらいデカかったけど、クマジイも同じくらいデカい!”クマの子はクマ”ってところだね。クマバアはオイラのことを「クロちゃん」と呼ぶんだ。そーいえば、角田のばあちゃんも「クロちゃん」って呼ぶっけ。ばあちゃん共通の呼び方みたいだ。家に着くと間髪入れずにクマゴローとクマジイは酒を飲みはじめた。やっぱ”のんべの子はのんべ”なんだね。ぴろ助も一応つきあわなきゃいけない嫌嫌つきあってんのか、自分が飲みたいだけなのかわからないけどねってんで、オイラだけ2階の部屋にとりのこされたんだ。
ひとりになってあらためて部屋の中を眺めてみると、はじめて来たところだから、右も左も見たことないものだらけ。好奇心がくすぐられますなぁ。未知の領域に足を踏み入れるってのは、日常生活では味わえない刺激があるね。まぁとりあえず部屋中をパトロールしてオイラの匂いをこすりつけてやれ。
ひとりにされてからどのくらい経ったのか、もう部屋の隅々まで探検しちゃったし、特段変わったものもないから飽きちゃったよ。昔の水曜スペシャル(わかる人だけわかってね)みたいに、二つ頭のヘビとか幻のツチノコとかいないのかね。せめておもちゃでもあれば暇つぶしになるんだけど、なーんも持ってきてないんだもんなぁ。ったく気のきかない奴等だよ。しょーがないから寝ちゃおうかな。朝から車に乗りっぱなしで疲れちゃったし。
しばらくすると誰かの足音で目が覚めた。外へ出るチャンスだと思ってドアのところで待ってるとクマゴローが入ってきたんだ。一瞬の隙をついて部屋の外へ出ると、目の前に階段があったんで一気に駆け下りた。実に爽快な気分だったよ。日頃は家の中にばかりいて、登り降りするといえばチェストかテレビくらいのもんだからねぇ。猫にとっては平面運動より上下運動が大切なんだから、家にも階段とかほしいなぁ。2階建ての家に引っ越せるくらい稼いでくれ。ダンボールとかアイロン台とか使ったクマゴロー製じゃんぐるじむだけじゃ運動不足になっちゃうよ。
1階に降りてみたら、これまた未知の世界が広がってるよ。押し入れの戸が開いてたんで、さっそく中へ入ってみたら、箱を開けないまま忘れ去られているものや、こんなにどーすんだ!ってくらいの座布団笑点でもやるつもりなのか?とか、いろんなものがごちゃごちゃ入ってて歩きにくい。まるでジャングルだなこりゃあ。押し入れを出て、次は台所方面を探索しようとしてたところでクマゴローに捕まってしまい、また2階に連れて行かれちゃった。
そのうち誰か来たら、また脱走してやろうと思ってるうちに寝てしまったようで、気がついたら部屋の中にぴろ助がいた。あれ?クマゴローの姿が見えないぞ。でもイビキは聞こえるから、酔っ払って隣の部屋で寝ちゃったらしい。まったく適量ってもんを知らないのかねぇ。それにしても隣までひびくとは、すさまじいイビキだ。暴走族よりたちわるいね。