GRAND SEIKO   Selfdater

日本が世界に誇る国産腕時計の最高峰「グランドセイコー」のセカンドモデルです。
セイコーの最高級ラインであるグランドセイコーの初代モデルは、手巻きの高級モデルであるクラウンをベースに1960年に誕生しました。
その後、1975年にクォーツ式のグランドクォーツが誕生するまでの間、セイコーの技術力をつぎ込み、精度にとことんこだわった様々な歴代モデルが登場しました。
他の機械式腕時計と同様に、グランドセイコーもクォーツ・ショックにより一時期生産が打ち切られていましたが、1998年に復活し、現在もセイコーの最高級ラインとして君臨しています。

1963年11月に諏訪精工舎が世に送り出した2代目グランドセイコーは、基本的にはファーストモデルにカレンダー機能を持たせたもので、クラウンベースの最終モデルであり、諏訪精工舎製最後の手巻き式グランドセイコーとなります。
初代は14K80ミクロンの総金張りケースを使用し、裏蓋はスナップバックという最高級モデルを多分に意識した仕様で、ラグからケースにかけて非常に美しいラインを形成しています。その一方で防水性はあまり考慮されていなかったようです。
それに対して2代目はケースマテリアルの基本にステンレススチールを採用し、スクリューバックにより50m防水を実現しています。外観上の特徴である太いラグについても、材質が柔らかいためにラグが曲がりやすいという初代の欠点をリカバリーするための改良だと思われます。
一部の特権階級向けの最高級品から実用性と耐久性を兼ね備えた高級品として、一般へも普及させようという考えに基づいた大幅な仕様変更だったのではないでしょうか。
初代は当時の大卒初任給の二倍以上の販売価格でしたが、ケース素材の変更によって、セカンドモデルは1ケ月分の給料とほぼ同額の価格設定となっています。
※当時の販売価格:2万7千円(昭和40年大卒初任給:2万3千円)



グランドセイコーのセカンドモデルには、文字盤・裏蓋・機械に至るまで多様なバリエーションが存在し、非常に謎の多いモデルです。
発売当初のペットネームは「グランドセイコー・セルフデータ」で、ムーブメントには5振動のCal.430を搭載し、SD文字盤に「Chronometer」の表記を施していました。
その後、全く同じムーブメントでありながらキャリバーbフみを変更したCal.5722Aとなり、合わせてケースb烽S3999から5722−9990に変更されました。
更にマイナーチェンジは続き、ダイヤルは開発されたばかりのAD文字盤に変更され、搭載する機械も5.5振動のCal.5722Bへと移行しました。
ダイヤルの意匠そのものにも大きな変化が見られ、「Chronometer」の表記が消え、モデルネームも「GrandSeiko」から「GS」に変更されました。
また、裏蓋のメダリオンも「獅子メダル」から「GSメダル」へと変わり、ペットネームも途中から「57グランドセイコー・カレンダー」となっています。
それぞれの変更時期について明記した正確な資料が無く、複数のバリエーションが混在した時期もあり、明確に区分するのは困難な状況にあります。
私が入手した個体は自分と同期となる1965年製で、一般的には中期型と呼ばれています。
アワーマーカーは、真鍮字金にロジウムメッキを施したAD型のバーインデックスです。この面取りしたバーインデックスとドルフィンハンドで構成されたダイヤルは、あくまでも視認性を追求したデザインで、現行のグランドセイコーにも受け継がれているセイコー・スタイルです。
カレンダーの早送りはリュウズ操作により行いますが、順送りも逆送りもできる機能を持っています。機械に負荷がかからないのかなぁ?という疑問があって逆送りは使わないようにしています。
リュウズはオリジナルで、「W SEIKO」の刻印があります。”W”は防水性を表す”WATER PROOF”の略でしょうか。以降のグランドセイコーのリュウズには「GS」マークへ変更されています。

搭載されるムーブメントはCal.5722Bです。5722Aからの変更点としては、精度向上のために振動数が5.5振動にアップしたことと、緩急針が歯車型に変更されたくらいでしょうか。
実はCal.5722Bにも2種類の仕様があります。この時計に搭載されている機械は、3番受けに「CHRONOMETER」の刻印がありますが、もう一方はこの刻印が無く、代わりに「35JEWELS」と刻印されています。


ムーブメントへの「CHRONOMETER」刻印の有無は、ダイヤルへの「Chronometer」表記の有無と連動しており、5722Bを搭載するモデルのほとんどが「Chronometer」表記のない「GS」型で、この時計のように5722Aと同一の外装に組み込まれ、「CHRONOMETER」刻印を持つモデルは、「GS」型への切替直前の短期間に極少数生産されたもののようです。

「Chronometer」の表記は、セイコーがクロノメーター優秀級相当の精度を持つことをPRするためのもので、証明書も歩度証明書ではなく、優秀級規格テスト合格品「SEIKO Chronometer 合格証」を添付して販売しました。
しかし、これは公的機関である「スイスクロノメーター検定協会(C.O.S.C)」での検定を受けたものではなかったため、国際クロノメーター管理委員会(C.I.C.C)からクレームがつきました。



C.O.S.Cの検定に合格したものだけが「CHRONOMETER OFFICIALLY CERTIFIED」を表記できるというのは、現在でも同様のルールですが、このクレームを受けて、1966年頃を境にグランドセイコーをはじめ、全ての機種から「Chronometer」の表記が無くなります。
グランドセイコーについては、この後から”スイスのクロノメーター基準よりも厳格な基準”として自社独自の”GS規格”を定め、現在に至っています。

裏蓋には初代から続くシンボルマークである「獅子」のメダリオンが輝きます。
この「獅子メダル」は、現行のグランドセイコーにも採用されていますが、当時はグランドセイコー以外にもキングセイコーやセイコーマチックの「Chronometer」に採用されていますので、「Chronometer」の象徴だったと思われます。
尾錠は現行のグランドセイコーのものを付けてみました。GS表記の尾錠と迷ったんですが、このモデルには独特の書体でのフル表記の方が似合うのではないかと思っています。SEIKO表記のオリジナル尾錠も欲しいんですが、なかなか見つからないし、相場がけっこう高くて。。。


時計に関して、ヨーロッパに100年遅れていた日本の時計業界でしたが、戦後僅かの間に著しい進歩を遂げ、ついには精度面においてスイス製品に劣らないものを製造する開発力と技術力を身につけました。グランドセイコーはその象徴であると思います。
クォーツの普及によりスイス時計業界を崩壊寸前まで追い込んだ張本人とも言えるセイコー社は、精度面で機械式を大きく上回り、かつ製造コストを大幅に削減できるクォーツに傾倒し、一時期完全に機械式の生産ラインをストップさせてしまい、その間に機械式の技術で再びスイスに大きく水を空けられてしまいました。
しかし、機械式生産復活後、再び高い技術力を発揮し、スプリングドライブといった革新的な機構を開発しています。
セイコーの技術をもってすれば、再び時計界に激震を走らせる革命的な機能が開発される日が来るかもしれませんが、2度と機械式の火を消さないで欲しいと願っています。

 



【 グランドセイコー セルフデーター】

●手巻き(35石) ●Cal. 5722B搭載 ●5.5振動 ●SSケース ●クロコダイルストラップ ●現行GS尾錠 ●日付表示 ●50m防水

 

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