DIANEX  MOON  PHASE

古典的な表情が魅力のトリプルカレンダー・ムーンフェイズです。
アンティークの雰囲気を漂わせていますが、製造年代は比較的新しい個体です。現行のムーンフェイズには珍しく、古き良き時代のディテールを再現した意匠に魅かれたのが購入に至った最大の理由です。

この時計を製造したのはスイスのDIANEXというメーカーです。
DIANEX社は1989年に設立された比較的新しいメーカーで、販売代理店によるマーケット開拓は行わず、ネット販売を中心に個人客向けに小ロット生産と販売を展開しているようです。
DIANEXの製品は日本には輸入されていないためほとんど無名ですが、独自の厳しい評価基準を設け、マイスター資格を有する熟練の技術者を要して、古典的技法と最新のテクノロジーを用いたうえで、スイス製の機械式ムーブメントにこだわり、クロノグラフやレギュレーター等のクラシカルな複雑モデルを中心に製造し、自社ブランドの時計として顧客向けに提供するなかなかユニークなメーカーです。
スイスには大手有名メーカーに製品を提供している小ロット生産の家族経営的メゾンが数多く存在しますが、DIANEX社の経営哲学はそれらのメゾンとは一線を画しているようです。
このモデルは会社創業当時に製造されたと思われ、現在では同社でムーンフェズは生産されていません。
ボーイズサイズのGPケースはベゼルを含めて全体的に丸みを強調したデザイン。ティアドロップ型のファンシーラグ、オニオンリュウズとの相乗効果で愛らしい表情を演出しています。



マットホワイトの文字盤外周には青のデイト表記があり、先端を青く着色したポインターデイト針が用いられています。現在はU字型をしたものがほとんどですが、このモデルはアロー型を採用しています。このあたりにも古典的意匠へのこだわりが感じられます。



 
アラビア数字とクサビ型を組み合わせたアプライトインデックスと、ドルフィン型の時分針がダイヤル全体を引き締めています。
6時位置にはスモールセコンドと同一サークルにムーンフェイズが配置されています。この秒針と月齢の同軸配置というのは高級機には比較的よく見られ、代表的なところではジャガー・ルクルト、オメガ、モバード等がありますが、手頃なものは探してみるとなかなかありません。個人的にはこのスモセコ同軸のムーンフェイズが最もデザイン的に優れていると思います。
ムーンフェイズディスクの月部分には古典機のお約束である”顔”が描かれています。微妙に笑っているような表情に何とも言えない味があります。
現行のムーンフェイズにも”顔”が画かれたものがありますが、クロノスイス等一部を除いてみんな同じ表情をしているように感じるのは気のせいでしょうか。
手巻きのムーヴメントは製造メーカーがはっきりわかりませんが、自社生産したものとは考えにくいので、どこかのエポーシュを使用していると思われます。
小型サイズでスモセコ同軸のムーンフェイズということを考えるとヴィーナス製のムーヴメントではないかとも考えられますが、資料が乏しいことと機械のホールマークが確認できないので断言できません。オーバーホールをする際に確認したいと思っています。
いずれにしても、ブリッジには丁寧なコート・ド・ジュネーブ装飾が行われていることから、独自のチューニングを施しているのは間違いないところです。
シースルーバックではないにも関わらず、ここまで丁寧な仕上
げを施すところにも、同社の良心がみてとれます。

月は一定の周期で満ち欠けを繰り返します。その際の三日月や満月といった見かけの形は「月相」、英語で「ムーンフェイズ(Moonphase)」と呼ばれ、夜空に現われる月の形を、そのままの形で小窓に表示する機能をもった時計に同じ名が用いられます。
世界で一般的に採用されている時計の時刻表示は、太陽の時間に基づいており、カレンダー表示も太陽暦(グレゴリオ暦)に従っています。それに対して「ムーンフェイズ」が表しているのは、月の時間、ひいては太陰暦です。
月は、人間の生活や自然現象と密接に結びついていたため、古くは時計塔の時代に始まり、近代の懐中時計などにもその表示が採り入れられていました。ムーンフェイズ機能を搭載したこれらの時計は非常に高価で、高貴な貴族向けに製造されていました。何とか一般人にも手が届くようになったのは腕時計に搭載されてからのことで、20世紀前半の腕時計にも、カレンダーとムーンフェイズを組み合わせたモデルは少なくありません。
月は約29.5日を一周期として同じ形になります。たとえば、満月から次の満月までに約29.5日かかるわけです。古代の人間は、これが12回繰り返されると、また同じ季節が巡ってくることを経験的に知っていました。1ケ月や1年という単位は、こうした天文観察から生まれたと言われています。
月の満ち欠けの周期が約29・5日であることから、59日で1回転するディスク(59の歯車がある)の上下2か所に月を描き、それが小窓に現われる形で、三日月や満月など、その日の月齢を示すようになっています。 ただ、厳密に計算すると、月齢周期は29・5日44分3秒であるため、59の歯車では44分3秒が32ケ月累積するとちょうど1日分の表示誤差を生みます。
普通のムーンフェイズが59歯のムーンディスクを使用するのに対し、ディスクの歯を135に増やすことで、実際の月齢との誤差を少なくしているモデルも存在します。通常のムーンフェイズでは、月齢との誤差調整は2年7か月に1回必要ですが(29・5日=1月齢につき44分3秒の誤差がある)、この方式だと122年に1回の調整ですむようになっています(1月齢につき57・5秒の誤差しか生じない)。 このような機能を「超精密ムーンフェイズ(Complicated Moonphase)」と言い、パテックやIWCのダヴィンチ等に搭載されています。


ケースからダイヤル、機械に至るまでの全てにおいて、細部に渡り非常に手の込んだ造りをしている時計で、購入後も大きな満足感を得ることができました。
昨今はあまりにも時計の価格が高騰しているだけに、同社のように無名であっても高品質の時計を適正価格で提供するメーカーがあるというのは、時計好きにとって非常に喜ばしいことですね。

 

【 DIANEX ムーンフェイズ】

●手巻き( 17石) ●5振動 ●トリプルカレンダー・ムーンフェイズ ●GFケース ●SSバック

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